
アメリカの企業で始まったものが、2012年にヤフーが導入し、国内企業にも広まりました。最近は小さな会社でも実施されてきました。人手不足を感じている会社には、効果が発揮されると思い紹介させていただきます。
1.1on1が普及した背景
理由は2つあります。
①変化が激しい環境
ビジネス環境の変化が激しく、目標に微修正が必要になったためです。多くの企業が目標管理制度を導入しており、社員一人ひとりが目標を設定し、その達成度合いで評価される方法を採用しています。
しかし、外部環境の変化のスピードが速まる中で、目標や達成に向けたシナリオが期間内に変わることが増えました。その結果、半年に1回の目標管理面談だけでは不十分となり、より頻繁に会話を交わして目標の微修正が求められるようになりました。
②離職社員の増加
社員の意識変化により、転職を比較的自由に行なう人が増えたことです。人材の流動化が進む中で、企業は社員が長く働くための環境整備が求められました。
以下の3つは社員が簡単に転職しない要素です。
- 仕事にやりがいを感じること
- 自分の成長実感があること
- 社会や他者のためになる仕事であること
これらを社員に実感させる場として1on1が活用されています。
以上のような背景から、1on1は日本の企業にも広がっていきました。1on1は上司と部下のコミュニケーションを強化し、目標管理だけでなく、離職防止や社員の成長を促す効果が期待できます。また、部下の不安や悩みを把握し、円滑な業務進捗や従業員満足度向上にも寄与します。
これからもさまざまな企業で1on1が継続的に実施され、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、社員の会社や上司への「信頼感」が向上することが期待されます。
2.1on1の4つの効果
1on1はどのような効果が期待できるのでしょうか。1on1の効果は主に以下の4つの要素に分類されます。
- 人間関係の構築とコミュニケーションの向上
- 業務管理
- 社員の成長促進とスキルアップ支援
- 経営理念への共感と行動指針の浸透
①人間関係の構築とコミュニケーションの向上
上司と部下があまり話す機会がない企業では、まずは仕事に関係のない話題を共有することがポイントです。
お互いの趣味や生活背景など、個人として理解し合うことで、人間関係の構築が可能となります。もちろん、業務に必要最低限のコミュニケーションはできますが、質の高い仕事やチームでの助け合いは難しくなるでしょう。
②業務の管理
日々の業務の進行状況や発生している課題についてコミュニケーションを行います。上司は情報収集と問題解決ができるため、部下の悩み解消の可能性が向上します。
③社員の成長促進とスキルアップ支援
経験学習サイクルを効果的に進めるお手伝いをすることが重要です。経験学習サイクルは、
①経験
②振り返り
③概念化
④実践
という4つのステップから構成されています。ある業務が完了したら、成功した点や失敗した点を振り返ります。そして、その反省を一般化し、概念化することが大切です。このプロセスが上司と部下の成長に繋がります。
より具体的には、「今回の仕事でこの部分はうまくいったと感じるが、何か理由があると思う?」「ここは上手くいかなかったが、どうしてだろう?」「次に同じタスクを行うとき、どのように取り組むべきか?」「もし、〇〇という別の業務にこの経験を応用するとしたら、どのように進められるだろうか?」といった質問を投げかけます。このように上司が適切に関与することで、部下は自らの成長を実感し、組織全体の業務効率と部下と上司の信頼関係が向上することでしょう。
さきに紹介したヤフーは、「経験学習モデル」の実践について力を入れていると言っています。
④仕事の価値を共有
自分が手掛けた業務において、どのような価値が存在するかを共有することが重要です。なぜなら、「経営理念や行動指針」への共感が社員たちを一生懸命働かせ、離職を防止する効果があるからです。企業がどんな価値を生み出し続けていくか、また、どんな働き方が望ましいかという点に共感性が高まると、従業員は真剣に取り組み、辞めることを考えません。日々の業務に追われるあまり、社会とのつながりを見失いがちですが、仕事の節目ごとに、「お客様がこれほどまでに喜んでくれると嬉しいね。次にこのお客様のためにどんな取り組みができるだろう?」といったテーマで話し合うことが大切です。自分たちが実施する業務の意義を正しく認識し感じることが、効果的な人材育成や離職防止に繋がるという点を見逃してはなりません。
3.1on1の心構えは4つの機能をフル活用する目的意識
1on1が効果的に機能していますか?その4つの効果を実感できているでしょうか?「最初の段階の目的は達成できたが、次にどう進めば良いか見当がつかない」と感じたり、「回を重ねるごとにストレスを感じるようになった」といった問題が生じることがあります。これは、1on1が目的に応じて適切にアプローチされていない可能性があります。
1on1では、4つのステップを逐次的に実施する必要がありますが、それらのステップを柔軟に行ったり来たりすることも可能です。例えば、ある時期は業務に重点を置いた2番目のステップを実施し、業務が終了したら振り返りを行う3番目のステップに移行します。新しいメンバーがチームに加わった場合は、再び1番目のステップから始めることが適切です。この4つのステップは、相互に関連していることを意識しましょう。
ただし、人間関係が築かれていない状態で2番目、3番目、4番目のステップに進むことは困難です。まずは、信頼関係を構築することから始めてください。
この3番目と4番目のステップがうまく機能すると、先ほど述べた
「①仕事にやりがいを感じる」
「②自分の成長を実感できる」
「③社会や他者のためになる仕事であること」
の3つの要素を満たすことができます。これは非常に大きな効果を発揮することができます。
部下とのコミュニケーションを大切にし、1on1を効果的に活用して、従業員のモチベーション向上やスキルの育成に役立てることが、組織全体の成功へのカギとなります。
4.1on1のコツは聴き上手
聴き上手の重要性とポイント
聴き上手とは、相手の話を理解し、対話を円滑に進めるための重要なスキルです。これを身につけることで、部下とのコミュニケーションが向上し、仕事の効率や離職防止につながることがあります。以下に、聴き上手として押さえておくべきポイントを挙げます。
①ジャッジせずに聴く
上司が部下の話を聴く際に、「そうではなくて、○○した方がいい!」とすぐに判断を下すことなく、まずは部下の話に耳を傾けることが大切です。聞く態度で接し、質問を重視して、判断は後回しにすることが肝心です。これによって部下は、1on1で自分の意見が否定されることを恐れず、自由に話すことができます。
②共感力を持って聴く
部下の意見や行動に対して、「なぜそう思ったのか?」「何を大事にしているのか?」といった部下の価値観を理解しようとする姿勢が重要です。たとえ意見が自己中心的だと感じたとしても、部下がどのような視点を持っているのか、その背景まで理解しようとすることが大切です。
③関係性の薄い人が聴く
上司と部下ではなく、関係性が薄い第三者が聞き手になることで、上司はフラットに話を聴くことができ、部下は遠慮なく話すことができるメリットがあります。聴くことが苦手な上司の場合、この方法を取り入れることで、上司と部下双方にとって幸せになる可能性が高まります。
上記のようなポイントに気を付けて、聴き上手な上司になることで、部下との信頼関係を築くことができるでしょう。また、これによって業務効率や離職防止にも繋がります。
5.聴く前の準備
話題に関する項目をあらかじめ準備しておくことで、円滑なコミュニケーションを実現できるようになります。設定された項目に沿って内容を確認し、その回答を元に質問を投げかけ、メモに記録していくことで、効果的な1on1セッションが実現できます。具体的な効果は以下の通りです。
- 以前のセッションで話した内容を復習することで、「前回の話を忘れていました」という状況を回避できます。
- 前回の課題についての進捗状況を確認し、1on1の連続性を保つことができます。
- 上司のコミュニケーション能力に依存しない、一定の品質を維持することができます。
- 長期的な記録を通じて、部下の成長や感情の変化を把握することができます。
具体的な話題として、以下の項目が挙げられます。
- 体調や健康状況に関する話題
- モチベーションや仕事への意欲について
- 業務の進捗や達成感に関する話題
- プライベートな生活や幸福感について
- 家族の幸せや問題について
- 仕事上の悩みや課題に関する話題
- 同僚や職場の人間関係に関する悩みや問題
- 仕事量や負担についての話題
- 会社が改善すべき点や提案について
- 上司や上層部への不満や要望に関する話題
このように、事前に話題を整理しておくことで、効果的な1on1の実施が可能になり、部下との信頼関係を築き、組織の成長につながるコミュニケーションが実現できます。
6.まとめ
1on1は、社員の離職を防ぐための有効な手段であり、企業の成長にも寄与します。成功している会社では、以下のポイントを押さえて1on1を実施しています。
1. 1on1の4つの機能をしっかりと理解し、効果的なコミュニケーションを心がけること
- 人間関係の構築とコミュニケーションの向上
- 業務管理
- 社員の成長促進とスキルアップ支援
- 経営理念への共感と行動指針の浸透
2. 上司が良い聴き手になること。部下の話をじっくりと聴き、理解し、信頼関係を築くことが大切です。
3. 1on1の進め方について、事前にアジェンダを準備し、前回の振り返りを行うこと。これにより、効率的なコミュニケーションが可能となり、部下の成長や業務改善につながります。
以上のポイントに留意し、効果的な1on1を実施することで、社員の離職防止に繋がるだけでなく、企業全体の成長にも寄与することが期待できます。当事務所でも、このポイントをふまえ、社員の福祉向上や業務効率の改善に努めております。

